今回は、言葉を理解したり表出(話したり、ジェスチャすること)したりするために必要な機能をお話します。
まずは、言葉を理解する時に必要な機能を挙げてみます。
- 聴覚的把持力
- 音韻認識(音韻意識ともいわれます)
- シンボル機能
- 概念形成
aseru
mimi
言語聴覚士の中では、よく使われる言葉なんですけどね。
ちなみに4つの機能を簡単な言葉に置き換えると、こんな感じになります。
- 聴覚的把持力→言葉を記憶する機能
- 音韻認識→ 音を日本語の音として認識する機能
- シンボル機能→物を名前などで示す機能
- 概念形成→ 物や事柄の意味を理解する機能
ん~。それでもちょっとわからないです…。
aseru
mimi
そうですか…。
というわけで4つの機能について例などを用いながら詳しく解説していきます!
まずは、聴覚的把持力について説明します。
機能① 聴覚的把持力
これは、言葉を聞いて、言葉を頭の中に記憶しておく機能です。
記憶と言っても、とても短い記憶です。
例えば、電話番号を聞いて即座に復唱するとき、何桁まで一度に聞けるか、などが聴覚的把持力と関係しています。
聴覚的把持力が弱いお子さんだと、「りんご」と言われても、最後の「ご」だけしか覚えられなかったりします。
aseru
mimi
訓練は次のように行います。
単語が最後まで言えないお子さんだったら、まずは2音の単語の聞き取りから訓練します。「ウシ」「ウマ」「ゾウ」など、その言葉を聞きとって絵カードを選んだり、人形を選んだりする訓練です。
そこから、徐々に3音の単語、4音の単語と増やしていきます。
1つの単語が聞き取れるようになったら、2つの単語、3つの単語を聞きとる訓練をします。
aseru
mimi
ですので、お店屋さんごっごや、カード釣りゲームや、おままごとなどの遊びの中でやっていきます。
aseru
mimi
次は、音韻認識について説明します。
機能② 音韻認識
これは、音の中から、日本語の音韻を認識して、日本語の音として識別する機能です。
例えば、「リンゴ」という音を聞いて「リ」と「ン」と「ゴ」という音が並んでいるなと理解できることです。
aseru
mimi
私たちでも、学んでいない外国語を聞いたとき、どこが区切りなのか分からないのと一緒です。
また、「リンゴ」は、日本人の誰が言っても「リンゴ」と聞こえます。
人によって、声の周波数は全く違う、つまり、物理的には違う音なのに、音韻認識が育ってくると、同じ単語として聞き取れてきます。
幼児の英会話教室で、何歳までに始めるのがいいい、と宣伝しているところがありますが、それは音韻認識は小さいころに育つ、小さいころにしか育たない、と言われているためです。
aseru
mimi
ただ、もともと音韻認識が弱いお子さんが日本語をちゃんと話せる前に英語を学んでしまうと、弊害があるように感じます。
aseru
mimi
まあ、これは私の個人的な意見なので、信じるのも信じないのもあなた次第です。
aseru
次は、シンボル機能について説明します。
機能③ シンボル機能
現実にあるものを、名前やジェスチャなどのシンボル(符号)に置き換える機能です。
この機能が育っていれば、例えば、実物のいちごが「イチゴ」という音に対応していることに気づきます。
この場合、音声の「イチゴ」がシンボルになります。シンボルになるものとしては、文字単語だったり、イラストだったり、何かを意味するマークや標識などもシンボルです。
mimi
機能④ 概念形成
概念については、認知が育って言葉が育つでも説明しています。
mimi
でも、「ウサギ」と聞いたときにあなたと私の頭に浮かぶのはゾウやキリンの形ではなくウサギの形ですよね。これはあなたと私の間で、「ウサギ」に対する同じような概念を持っているということなんです。
この他にも、「大きい」や「小さい」なども、その意味、概念が分かっていないと使えませんよね。
ヘレンケラーが初めて言葉を知ったのは「water」だ、というのは有名ですよね。
その時彼女は水の意味を理解(概念形成)し、水には名前があること(シンボル機能)に気づいたんですね。
aseru
mimi
概念を形成するためには、いろいろな経験、学習を積まなければなりません。
定型発達のお子さんなら、概念は教えなくとも習得できます。しかし、発達に遅れのあるお子さんは自分で学ぶことが難しいのです。
ある程度の単語が言えるようになったお子さん(つまり、聴覚的把持力、音韻認識、シンボル機能を少しでも獲得できたお子さん)が、言葉を増やすために必要なことは、理解できる概念を増やしていくことなのです。
つまり、言葉が増えることと、概念が増えることは同じなのです。
mimi
aseru
mimi
言語訓練では概念形成を助けるために、物を使った訓練や、生活の様子を疑似体験したり、イメージするような訓練も行います。
言語訓練中に概念形成までには至らなくとも、言語訓練で学んだことを実生活で体験したときに、『ああそういうことだったのか』と気づいてくれることが、概念形成の助けになると思っています。