発達性発語失行を疑う2つのポイントと訓練・練習方法

今回は『言葉を話すことが苦手』の原因の1つのとして考えられる、発達性発語失行についてお話します。

(※このページは私の経験から記載している内容です。実際の診断とは無関係です。)

mimi

以前、言葉を話すために必要な機能 についてお話ししましたが、その中の 構音運動企画 が育っていないことがこの症状の原因であると思われます。運動企画がうまく機能しない場合を、失行といいます。
失行?初めて聞きました。

aseru

mimi

失行とは、ある運動を意図的に行うことができない症状です。無意識であれば動かせているのに、意識してやろうとするとできなくなったり、違う動きになったりしてしまいます。
そんなことあるんですか?

aseru

mimi

脳梗塞などの脳血管障害にかかった方に失行が見られる方もいます。その場合は後天的な疾患が原因なので発達性とは言いません。

失行には、発語失行の他、服がスムーズに着られなくなる着衣失行などもあります。

こちらのサイトに様々な失行の例が書かれています。

え!?服が着られなくなる症状もあるんですね。

こんな説明動画 もありました!

aseru

mimi

発語失行については

こちらのYouTube の1分20秒頃の動画で発話の状態をみることができます。「はなや」と言いたいのですが、「あだだ」。3回続けて言ってくださいの指示には、「だ」と言ったあと、ううん、違うという意味で首を振っています。「は」と言いたいのですが、「だ」になってしまっています。その後、「だだや」「だだだ」「だだ、だ」となってしまっています。誤り方に決まったパターンはなく浮動的です。

言い誤り方が一定していないんですね。

aseru

mimi

お子さんの場合、言葉を真似して言うことが苦手なのは勿論、「ベロをべーと出して、ひっこめて」と真似させようとしても、舌を口から出すことができなかったり、「あ~と口を開けて」や「う~い」と真似させようとしてもそれができなかったりします。でも、食事の時には舌を動かしたり、口を開けることができます。これが、発達性発語失行があるかどうかを疑う1つのポイントだと私は思っています。とても簡単な動きですが、それができないお子さんもいます。

あの、気になったのですが。先ほどの動画の方、自分で話した後に笑っていますね。

aseru

mimi

「花屋」と言えていないことに気づいていらっしゃるんですね。
言いたい音があるのに、それがうまく言えないんですね。

aseru

mimi

発達性発語失行であろうと思われるお子さんの場合、自分でうまく口が動かせないことがわかっているので、訓練への取り組みが悪かったり(苦手なことだと自分で分かっているのでやりたがらない)、独自のジェスチャで表現したがるお子さんもいます。この、独自のジェスチャなどで気持ちを表現すことができるという点。これはつまり言葉の概念は分かっている(知的能力は保たれている)が、口を動かすことだけが難しいのではないか、発達性発語失行ではないかと疑う2つ目のポイントだと思っています。

そうなんですか。それって何か論文に書かれているんですか?

aseru

mimi

そんなの知りません。でも、理論的に考えて、お子さんの経過も見ていると、そうかなと私は思っています。

はあ…。では、訓練はどんなことをするのですか?

aseru

mimi

脳血管疾患に罹って後天的に発音ができなくなった方は、脳の運動を記憶する部分に、正しい運動の記憶が残っている可能性があります。でもお子さんの場合、正しい運動を記憶することがまだできていません。それが『発達性』発語失行と言われる所以です。適切な訓練をすることで、正しい運動の記憶をつくる脳の発達を促していきます。
具体的には?

aseru

mimi

お子さんによって症状は違うので、方法は様々なのですが、例えば、大人の真似をして舌を出す、舌を横に動かせるようになる、母音の口の動きができる、母音を発声する、などを行っています。母音の口形模倣をするときの絵 なども使って。また、意識して声を出すこと自体も難しい、意識して息を吐いたり、鼻から息をだしたり、口を閉じて「ん-」と言ったりも難しいお子さんの場合は、ティッシュペーパーを口元は鼻に近づけてそれに息をかけたりする練習もします。そして徐々に1音の模倣、2音の模倣に繋げていきます。

すごく簡単そうな訓練ですね。

aseru

mimi

椅子に座って訓練できるお子さんなら簡単です。でも、療育に来られるお子さんや、訪問リハビリでのお子さんは椅子に座ることも難しいので。苦手な動作はやりたくないので逃げちゃいますね。何か楽しくなるようなものを準備して、訓練することが必要です。そこがこの仕事の大変なところですね。

じゃあ、家で練習するのは難しいんですね。

aseru

mimi

難しいかもしれませんが、例えば、歌をゆっくりはっきり歌ったりするだけでもいいんですよ『チューリップの歌』とか。あとはお風呂の時とか、保護者と向かい合った時に口真似をしてもらったりとか。YouTubeを見ながらあいうべ体操 をするのもいいですね。

す、すごい、体を張った動画ですね。

aseru

mimi

私も言語訓練では体張ってます!

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