知り合いのSTさんから、以下のようなお子さんについての相談を受けました。
年中男児。自閉スペクトラム症で軽度知的障害。
挨拶ややり取りは可能。他動で衝動性あり。落ち着きなし常に動き回る。
気持ちや行動のコントロールが難しく、自分の意向に合わないと癇癪を起す。
ただし、癇癪は家族に対してのみ。
コロナで外遊びが少なくなって症状が悪化してきた。
どんな訓練が考えられるか?
子どもをスクリーニング評価するために何を使ったらいいか?
あまり詳しくは書けませんが、私は次のような返事を書きました。
(他の方のご意見も伺いたいので、ご覧になっているあなた!コメント下さい!!)
お子さんに有効かと思われる情報を4つに分けて書きます。
(1)感覚・運動の面から
(2)認知全体の面から
(3)言語面と、言語訓練で気づいたこと。
(4)癇癪への対応について
まず、
(1)感覚・運動の面から
外遊びが少なくなった状況なので、感覚を欲しているのかな。
手っ取り早くやるには、トランポリンや、ピーナッツバルーンにまたがって飛ぶのがいいかなと。
トランポリンも自由に飛ぶのもいいですが、大脳皮質から下位脳へのコントロールが加わるともっといいです。跳びながら風船を叩くとか、数を数えるとか。動きを自分でコントロールできるといいです。
この辺のことは、OT木村順先生や、宇佐川研などで私は学びました。
発達支援.com という会員制のサイトがあるのですが、14日間は無料なので、覗いてみるといいかなと思います。
https://hattatsushiensalon.com/
(2)認知全体の面から
これも、宇佐川研と関連するんですが。
お子さんのつまずきには、何らかの認知発達の取りこぼしがある、という考え方があります。この辺は、感覚と運動の高次化理論を考えた宇佐川先生の本が参考になりました。私のHPにも書きました。
感覚と運動の高次化理論
気持ちを言語化する、についてですが、これは象徴機能や概念の育ちが自己像の発達につながっています。ごっこあそびや見立てあそびはできますかね?
『感覚と運動の高次化からみた子ども理解』のp.147を引用すると、
概念化とは、例えば、赤いリンゴ、緑色のメロン、黄色いバナナ、赤いスポーツカー、緑色のバイク、黄色い自転車という6枚の絵があったとき、まず、果物と乗り物に分類できるか、その直後に色で分類させても混乱しないか。こんなふうに、頭の中で分類基準を柔軟に切り替えることをいいます。
もしできなかったら、こういうこともSTでやってみてもいいと思います。
なんか、回り道っぽい訓練ですけど。
最近は、上記の本をさらみ分かりやすく著した本が発行されたようです。
『感覚と運動の高次化理論からみた発達支援の展開』
https://www.gakuensha.co.jp/book/b580807.html
自閉症児に対して、認知発達が大事だという点は、太田ステージでもいっています。
あと、NCプログラムも同様の考え方です。下記のサイトにある、
http://www.nozomic.org/nozomic0009.html
「認知・言語促進プログラム」6500円は、アセスメントや訓練案にも使えます。そんなに詳しい内容じゃないですけど、ヒントになります。
(3)言語面と、言語訓練で気づいたこと
言葉の基礎的な部分ができているか評価が必要だと思います。
聴覚的把持力、色や形などの概念や言葉の理解、数概念、
形容詞や動作語の理解などなど。
ST訓練で私が使っているのは、
絵画語彙発達検査(PVT-R)
質問-応答関係検査
LCスケール
です。
◆絵画語彙発達検査
言語理解を検査します。絵を指さしてもらい、10分ぐらいでできます。
こんなので評価できるの?って思ってましたが、実際使ってみると、
療育にきている4歳児だと、話をしている子でもSS=6ぐらいの子が多くて、
動作語やカテゴリ語が分からなかったりします。
標準はSS=10です。
理解の良い子はSS=12であったりします。
◆質問-応答関係検査
このお子さんなら、日常的質問なら答えられそうですね。
でも、なぞなぞは難しかったりするかも。
◆LCスケール
http://www.saccess55.co.jp/kobetu_LCscale.html
本来は各項目を万遍なく実施してLC年齢やLC指数を出すために使うのですが、私はそれはやっておらず、単項目で実施し、スクリーニング的に使っています。各検査項目には通過年齢が書いてあるので、それを目安にしています。
図版がついているので便利です。
言語訓練をしていて気づいたことを書かせてください。
自閉症のお子さんって、統合力が弱い、といわれています。
注目や記憶が断片的、っていう感じなんですけど。
視覚的課題で言えば、直線で4つに分けた絵のパズルが難しかったり。
(直線であるのがポイントです。形が特徴的なパズルは、形の一部分を見るだけで組み合わせられるので)
4つの系列絵の並べ替えが難しかったり。
(時間感覚も、断片的だったり)
聴覚的課題で言うと、質問の最初の部分だけを聞いて答えてしまったり。
「野菜を切るものは」→だいこん
「食べ物を冷やすものは」→リンゴ
質問-応答関係検査のなぞなぞは、数が少ないので、
たくさんのなぞなぞをやりたい場合は、
『発達障害児のためのことばの練習帳しつもん文(コロロ発達療育センター)』
がおすすめです。私は成人の失語症訓練にも使ってます。
この本にある、味は?色は?形は?に答えられない子もいます。
(4)癇癪への対応について
家族以外には手を出さない、ということは、家族に対して不満があるのかな?
心理士さんに関わってもらったほうがいいかも。
もしかしたら、愛情不足かも?療育的にはこういう言い方したくないですが。
お子さんと触れ合ってマッサージをしたり、好きなおかずを作ってあげたり。
ご家族は普段、お子さんからのちょっとした要求を満たしてあげていますかね?
だっこして、手伝って、などの要求に対してです。
できることは自分でやりなさい、的な躾だったら、
一時的でいいので、躾しない方針にしたらどうですかね?
(これは、吃音やチックがでたお子さんの保護者に私が言っている対応です)
ABAなどの技法で、タイムアウト、とかの方法もありますが、
それは、行動療法の専門家でないと使っちゃだめみたいです。
誤って使うと、問題行動が増幅してしまうそうです。
先日、たまたまABAの資格を持っている友人に話をききました。
療育の職場では、落ち着いた場所に移動させる程度ですね。
問題が起こらないように考えるのが、STにできることかな、と思います。
(追記)
気持ちの言葉も大事だと、書き忘れました。
湯汲英史さんが書かれている、関わりことば に関する本も参考になります。
「残念」「仕方ない」などの言葉を聞いたり使うことで、その概念も理解していくので。